ゴルフで「力を抜くのが大事だよ」とよく聞きますが、本当に力を抜くとボールが遠くまで飛ぶのか、不安になるかもしれませんね。
でも、プロの選手やゴルフのうまい人が目指す「脱力(だつりょく)」は、単にだらっとすることではありません。それは、一番いい動きを、長い時間続けても疲れないようにするための「体の動かし方の工夫」なのです。
もし、1〜2時間クラブを振っただけで疲れてしまうなら、それはあなたがムダな力を使ってしまっている証拠です。体が疲れたと感じるのは、「必要のない場所に力が入っているよ」という体からの大切なサインなんです。
スポーツに限らず日常で脱力を意識せず出来ている人がいたら肩こりや腰痛、冬の寒さの強張り等自分でコントロール出来るすごい人とまずは思うことにしましょう。
脱力の本当の意味:力の「スイッチ」を上手に切り替えること
「脱力」とは、常に力を抜くことではありません。力の入れ方には、「オン」と「オフ」の切り替えが大切です。
- 力の「オン」:ボールを打つなど、本当に力を出すべき一瞬に、必要な力だけを集中させる。
- 力の「オフ」:それ以外の時間や動きの途中で、しっかりと体の力をリラックスさせる。
脱力とは、この「力のオンとオフの切り替え」を上手にすることです。余計な力を抜くことで、大きな力を出すための準備ができて、いつも同じ動き(再現性)でクラブを振れるようになります。
どうして体はすぐに疲れてしまうの?ムダな力みの原因
あなたがすぐに疲れてしまうのには、ハッキリとした理由があります。
クラブ(道具)の力に逆らっている
体が疲れる大きな原因の一つは、「クラブが持っている力(遠心力など)に逆らってしまっている」ことです。
例:縄跳びの縄を振る動き
- もし、縄が回ろうとする力に逆らって、あなたの腕の力で更に速く回そうとしたら、腕はすぐに疲れてしまいます。
- でも、縄が回る勢いを上手に使って体を動かせば、少ない力で楽に動かし続けられます。これは、あなたの力ではなく、縄の力を借りているからです。
ゴルフのクラブも同じです。クラブを振ると、とても強い遠心力が生まれます。ゴルフにおける「脱力」とは、このクラブが持つ自然な力に、あなたの体をムチのようにゆだねることです。逆に、手や腕に力を入れてクラブの動きをムリに操作しようとすると、クラブの強い力に常に逆らうことになり、すぐに疲れてしまうのです。
体の中で「アクセルとブレーキ」を同時に踏んでいる
疲れるもう一つの原因は、体の中で「アクセル(進む力)」と「ブレーキ(止める力)」を同時に使ってしまっていることです。
- これは、「前に進もうとする筋肉」と、「その動きを止めようとする筋肉」が、必要以上に同時に頑張ってしまう状態です。
- この状態では、力がお互いを打ち消し合い、少しの力しか出せないのに、エネルギーを大量に消費してしまいます。これが、短い時間で体が硬くなり、疲れてしまう根本的な理由です。
体のセンサー(感覚)が乱れている
力を抜き、体が上手く動くかどうかは、あなたが持っている特別なセンサー「固有感覚(こゆうかんかく)」の働きにかかっています。
- 固有感覚とは、「目で見なくても、自分の手足が今どこにあって、どんなふうに動いているか」を脳に伝えるセンサーです。
- このセンサーがきちんと働いていると、体はちょうどいい力加減を自動で決めてくれます。
- しかし、スイング中に力を入れすぎるのは、このセンサーが上手く働かず、体の動きが分からなくて不安になり、全身の筋肉を固めてしまう「防御の動き」が起きているからです。脱力は、このムダな防御の力をやめて、体のセンサーを信じて動くことです。
脱力は健康に良い!腰痛やケガを防ぐ理由
脱力を理解して実践すれば、腰の痛みや肩のこりといった体の問題を防ぐことができます。
力みは痛みの原因!負担が一部に集中する
体に力が入っていると、関節の動きが硬くなり、スイングの速い動きが終わった時に、体にかかる衝撃をうまく吸収できなくなります。
- 特に、腕や肩に力が入ると、体全体が回る動きが邪魔されます。
- 本来は体全体で分けて受け止めるべき大きな力が、動きをかばうために腰や首に集中してかかってしまいます。
- これが、腰痛や肩こりの大きな原因になります。
脱力することで、体の動きがスムーズになり、下半身から生まれた力が体全体にうまく分散されます。これにより、腰に集中する「ねじれの力」が減り、ケガをする危険性を大きく下げることができます。
「心の準備」も脱力につながる
力を出す動きの前に、私たちが「よいしょ」や「どっこいしょ」といった掛け声を使うのは、実は脱力のための知恵です。
- これは、力を出す直前に意識して呼吸を整え、全身の緊張を一瞬だけ解くことで、ムダな力みが入るのを防ぐ役割があります。
- ゴルフでも、構え(アドレス)に入るときの軽い素振りや、スイング前の「一呼吸置く時間」は、この意識的な脱力を助ける大切な準備です。
知っておきたい!「いる力」と「いらない力」
すべての力が悪いわけではありません。スイングの中で、力を「入れた方がいい瞬間」と「抜いた方がいい瞬間」を知っておきましょう。
| 力の種類 | 使うタイミング | 大切な理由 |
| いらない力 | スイングを加速させている途中の、腕や肩の力。 | ここで力むと体が硬くなり、動きが不安定になり、エネルギーがムダになります。 |
| 必要な力 | * ボールを正確に打つ一瞬の力。 * スイングを終えた後に体が倒れないようにピタッと止まるためのブレーキの力。 | この瞬間的な力は、クラブをコントロールし、関節を守るために大切です。 |
脱力とは、この「いらない力」を抜いて、「必要な力」を「必要な時だけ」使う、上手な体の使い方なのです。
力を抜くと「いつも同じスイング」ができる秘密
ゴルフが上達するためには、スイングの「再現性(さいげんせい)」、つまり「いつも同じ動きができること」がとても重要です。
再現性のための脱力:ムダな動きをなくす
力が入っていると、体は硬くなり、クラブを「自分でどうにか操作しよう」とするムダな動き(軌道を直そうとする動きなど)が生まれてしまいます。
- これらのムダな動きは、スイングを毎回変えてしまう原因になり、ショットが不安定になります。
- 脱力によってムダな動きが減ると、スイングの道筋が安定し、再現性が高まります。
腕がリラックスして、クラブの勢い(遠心力)に身を任せることができれば、クラブは最も効率的な道筋を描こうとします。脱力とは、ゴルファーがクラブの自動的な動きや、物理の法則を信頼し、「手での操作」をやめることから生まれる結果なのです。
脱力のすごい効果まとめ
脱力がもたらす、良い効果をまとめます。
| 効果の項目 | 具体的な良いこと | 体が良くなる仕組み |
| ケガ予防 | 手首、肘、肩などの痛みを減らす。 | 関節にムリな力がかからず、衝撃をうまく吸収できる。 |
| 健康維持 | 腰痛や肩こりになりにくくなる。 | 余計な力が入らず、体全体でバランスよく動けるようになる。 |
| 運動効率 | 少ない力で遠くまでボールを飛ばせる。 | ムダな動きがなくなり、エネルギーの消費が最適になる。 |
| 再現性 | いつも同じスイングができるようになる。 | 力の「オンとオフ」の切り替えが上手になり、動きが安定する。 |
まとめ:疲労を知らない、理想のゴルフへ
「脱力」とは、最終的には「あなたの体のつくりと、物理の法則を信じて任せる」行動です。
ムダな力みをなくすことで、体は本来持っている動きの機能を取り戻し、クラブの設計やスイングの連動(運動連鎖)が持つ力を最大限に引き出すことができます。
脱力によって、ケガの危険性を減らし、動きの再現性を高め、疲れを最小限に抑えることで、あなたは「24時間振っても疲れない」ような、究極で最高の動きを長く続けられる理想のゴルフに近づくことができます。脱力を身につけることは、ゴルフの上達だけでなく、長く健康にゴルフを楽しむための方法なのです。

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